メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~
『拝啓旦那様
九月も終わりがみえてきて、信州は秋真っ盛りです。旦那様はいかがお過ごしですか?
先日は晴夏さんと一緒にお義母様が遊びに来てくれました。不意打ちでお会いした時はどうなることかと思いましたが、今ではすっかり仲良しになってしまいました。ばれることはないと思いますが、もし本当のことが知られてしまったらどうなるのでしょう。お義母様は優しくていい人で、そんなお義母様を悲しませるようなことになったらと思うと胸が痛みます。だから、そのときは、全て旦那様のせいにすることにします。私はスタコラ逃げ出しますので、覚悟しておいてください。(かなり真面目に脅しています)
今いる町の対策は、DIY教室、草木染教室、そば打ち教室などの、各種体験ツアーを組むことになったと聞きました。DIY教室では、家を丸ごと使ってリフォーム術を教えるそうですね。気に入ったらそのまま移住もできるとか。空き家対策にもなるし、すごいアイデアです!たくさんの人が参加してくれたらいいなと心から願っています。
私は来週から次の土地に移ります。一気に飛んで九州とは!晴夏さんが、そんなに遠くだと遊びに行けないと怒っていましたよ。もしかして、それが狙い?
ということで、信州からはこれが最後のお便りになります。まだ暑さが残りますが、朝晩の寒暖差が激しくなっていきますので、お体ご自愛下さい。末筆ながら私は今日も元気です。灯里』
「その通り」
安西は大きく頷いた。
メールには恨み言がつらつらと書いてあったが、安西の母は灯里のことが気に入って、なにかにつけて連絡を取ったり、訪ねたりしているらしい。
灯里のことだ。(想像だが)さぞかし嘘をつくのに心を痛めているだろう。そう思って、母が簡単に行けない場所にしたのだ。晴夏は軽々と行ってしまいそうだが、あいつを止めることなど誰にもできやしない。