メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~

封筒の中身は見合い写真だ。それも何枚も。

安西の母の実家は、京都の老舗和菓子店だ。誰もが知っている有名店で、株式も上場している。かなり大きな製菓会社と言えるのだが、祖父が会長を務め、伯父が社長に就き、いとこが副社長という絵にかいたような親族経営をしている。

社長を務める伯父には、副社長をしている息子以外にももう一人息子がいて、その二人に縁談がどしどし持ち込まれていることは聞いていた。
京都の名家である和菓子店と縁続きの関係になりたいと願う家がなんと多いことか。安西は他人事なので単に驚いていたが、いとこたちの結婚が相次いで決まると他人事ではなくなった。外孫の安西に縁談が持ち込まれるようになったのだ。

祖父から誰か相手はいるのかと聞かれたときに、「いない」と言ってしまったのが運の尽き。どうせいないならいいじゃないかと、じゃんじゃん見合い写真を送ってくるようになってしまった。

母は父と結婚して京都を出た。以来、ずっと東京暮しだ。安西も京都には遊びにいったことがある程度で、和菓子屋とは何の関係もない。安西と結婚したからといって、和菓子屋と深い縁ができるわけではないのに、縁談は持ち込まれる。

京都のお嬢様を嫁に迎えるなんてとんでもない。考えただけで面倒くさい。
ただでさえ仕事で問題が発生しているのに、これ以上の厄介ごとはご免だった。

「あっちもこっちも面倒なことばかりだな。一度に片付く方法はないのか」
安西は独りごちる。

するとその瞬間、素晴らしい閃きが舞い降りた。
「あったぞ、一度に解決する方法が!」

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