メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~
灯里のところにも心配した人たちからじゃんじゃん連絡が来た。
晴夏は、電話をくれた時点で既におんおんと泣いていた。灯里が「大丈夫だから」と慰め、切った後に「はて何の電話だったの?」と首をかしげたくらいだ。
祖母や義母、瀬戸内の島でお世話になったヨネさんからも電話があり、対応に追われて日が暮れた。
夕方やっと落ち着いてパソコンを開くと、「新着メール一通」とある。
今西も心配して連絡をくれたのかもしれない。
メールボックスを開けてみると、『大丈夫か?』と一言だけ書いてある。
「うそ…」
今まで何百とメールを送り続けた安西から、初めて送られてきたメールだった。
まじまじと『大丈夫か?』の文字を見つめる。
灯里のメールに反応してくれたことはあった。冬場の豪雪地帯にいた時に、『今までの人生の中で一番寒いです』と書いて送ったところ、温かいコートやらブーツやらが送られてきた。嬉しくて『ありがとうございます』とすぐさまお礼を送ったが普通にスルー。返事が返ってきたことは一度もない。
灯里は『大丈夫です』と返信をした。すると、すぐに『よかった』と返信がきた。
『よかった』の文字もじっと見つめていると、衝動的に気持ちが沸き上がる。
会いたい。会ってみたい、旦那様に…
離婚する前に一目だけでも会えないかな。
今までそんなことは思ったこともなかったのに、初めてメールのやり取りをしたからだろうか。
安西がとても身近に感じられた。
『おそらく三年間一度も会うことはありません』
今西の声が頭に響く。
わかってる。
でも、一度芽生えた希望はそうそう消えそうになかった。