メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~

『拝啓旦那様
寒い日が続きますが、旦那様は新しい年をどのようにお迎えですか?もうすぐ約束の三年が終わろうとしていますね。初めは突拍子もなく感じていた結婚生活ですが、終わりを迎えるとなると、少し寂しく感じています。

無理を言っていることは承知ですが、間もなくの離婚に際し、最初で最後のお願いがあります。一度でよいので、お目にかかることはできませんか?私の旦那様がどのような方だったのか、知っておきたいのです。
少しの時間で構いません。できればお茶を一杯ご一緒に。それが無理なら立ち話でも。指定していただければどこへでも参ります。どうかご検討のほどお願いいたします。末筆ながら、私は今日も元気です。灯里』

安西はメールを何度も読み返していた。
灯里からは新年の挨拶が必ず送られてくる。だから今回もその類だと思っていたのに、思いもよらぬ内容だったのだ。

年末に灯里がいる町を嵐が襲った。ニュースでそのことを知ると、とっさに『大丈夫か?』とメールを送ってしまった。なかなか返事が返ってこなかったのでヤキモキしたが、ポロンと『大丈夫です』と返信があり、また『よかった』と返事を返してしまったのだ。

ニュースを見る限り、ひどい嵐のようだ。安否を確認するのは当然のこと。
そう言い聞かせたが、三年間で初めて安西から連絡をしたのだ。自分でも驚いたが、衝動的に。

無事を確認できて本当にホッとした。
この気持ちは何なんだろう…


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