メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~

「なにーー!?おじいちゃん、それはないでしょ!当選したらどうすんのよっ」

何が『じいちゃんを助けてくれ』だ。勝手に応募してるくせに!

「いんや、当選するはずない。この前の正月、灯里が帰ってきたときにみんなで写真を撮ったやろ?あの写真を張り付けた。灯里が中央に映ってるが、顔なんかよう見えんやつや。誰が嫁候補?って思うくらいのやつやから大丈夫や。それに全国からわんさか応募してくるんやぞ。灯里が通るわけがない」
祖父はガハハハッと笑った。

「これでとりあえず時間を稼げる。応募したのに外れました、また方法は考えますって県に報告できるからな」

「なんなのそれ…」

ものすごく失礼なことを言われた気がするが、怒っていいのか安心していいのかわからない。しかも写真のデータは拡大できるから顔ぐらい確認できるんだけど。説明するとややこしいのでスルーするが…

「黙っとこうと思ったんやが、ばあさんが灯里に言っとかなあかんって言うから電話した。じゃあそういう事やから」
言いたいことを言うと、祖父はさっさと電話を切った。

しばらく唖然とする。いきなりの情報に頭が整理できない。
うちの村が人口減少で問題になってるということも心配だけど、勝手に嫁に応募されていたのも衝撃的だ。

でも祖父の言う通り当選する可能性はかなり低そうだ。と言うか、限りなくゼロに近い。
要は、お見合い写真に集合写真を選んだわけでしょ?
やる気のなさを全面的にアピールしているようなもんだ。

まあいいか、とため息を吐いた後ハッとして時計を見る。

ヤバい!締め切りが近づいている。

余計なことに頭を使う暇はない。灯里はまた、部屋の中を猛然と歩き出した。

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