追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める～世界を救えるのは正真正銘私だけです～

なぜそんなことをしたのかと問えば、『野心』とひと言返ってきたが、目を逸らしていたのが引っかかる。

最初は城下のとある子爵邸に使用人として住み込み、もっと大物に出会ったら同じように売り込みをかけて鞍替えし、そして最終的にベーベルシュタム卿にたどり着いた。

領地は辺境にあり半ば隠居したような、他貴族との交流の薄い貴族ではあったが、皇帝の遠縁にあたる血筋が魅力だった。

ベーベルシュタム夫妻には偶然にもシュナイザーと同じ名の息子がいた。

精神的な病を抱え屋敷から一歩も出られなかったその息子は、シュナイザーが夫妻と出会うひと月前に急死したという。

同じ名で年も近いシュナイザーとの出会いに運命を感じた夫妻は、彼を養子に迎えたのだ。

亡くなった息子がそれまで他貴族との交流がなかったことを利用して、シュナイザーはあたかも実子のようにふるまい、貴族社会で徐々に力をつけた。

そしてゴウランガ公爵に気に入られたこともあって皇帝にまで上り詰めたのだ。

皇帝の血筋でなければ帝位につけないという決まりはないが不文律である。