追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
調度類はどれも一級品で、絨毯やカーテンは落ち着いた藍色に統一されていた。

午後の政務を無理やり切り上げたシュナイザーは急ぎ足で私室に戻ってきたところである。

居間のソファにマントを放り投げ、そこを抜けてサンルームに入る。

太陽はだいぶ傾いているが西日の入るこの部屋は明るく暖かい。

白い丸テーブルと二脚の椅子が前庭を見渡せる開口の広い窓辺に置かれていた。

そこで給仕の従僕がひとり、黙々とお茶の準備をしている。

多忙なシュナイザーはいつもティータイムを簡単に済ませているが、今日はモニカを招いているため室内にはふんだんに花を飾り、サンドイッチやフルーツ、数種類の焼き菓子が三段のティースタンドにのっていた。

「ご苦労」

声をかけたシュナイザーに深々と一礼してから、従僕が手のひらでワゴン上の茶器を指す。

「三種類ご用意いたしました。どれになさいますか?」

シュナイザーは皇帝らしく見えるようにいつも気を使っている。

わざと偉そうに椅子に腰を下ろし、横柄な口調で『そんなものどれでもいい』と答えようとしたが、思い直して真ん中の茶器セットを選んだ。

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