追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
皇帝妃になろうとしている令嬢に脱走癖があるのも知られたくないので近衛兵に捕まえさせるわけにもいかず、やきもきしながら悪党を追尾して、ひとけがない場所でようやく助けることができたのだ。

「わかってる」

反省していたことを注意されたシュナイザーは面白くなく、ベルナールに顔を背けるように頬杖をついた。

するとベルナールがふとドア側に視線を向けてから、シュナイザーの後ろに回って急に背中に抱き着いてきた。

「は?」

驚くシュナイザーの耳元でベルナールが聞いたことのない甘い声で囁く。

「お前はいつもモニカのことばかりだ。そろそろ俺、妬いちゃうよ?」

「なに言って――」

その時、ドアが開けられて「お邪魔します」とモニカが顔を覗かせた。

はにかむような笑みを浮かべていた彼女だが、シュナイザーとベルナールのただならぬ姿に目を見開いて固まった。

(タイミングが最悪だ)

それもそのはず。

モニカはこの部屋の前にとうに着いており、廊下でベルナールに鉢合わせていた。

『モニカごめんね。シュナイザーと話があるから少しここで待っていて。五分くらいしたら入ってきていいよ。ノックはいらない』
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