追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
そう言われていたのだろうと瞬時に察したシュナイザーは、企んだベルナールの腕を払って立ち上がった。
「違う! こいつは俺をからかうのが好きなんだ。俺は昔からモニカ以外は眼中に――」
焦りからうっかり胸の内を明かしてしまい、シュナイザーはハッとして言葉を切った。
咳払いをしてごまかすと平静を装ってドアを閉めに行き、モニカの背に手を添えテーブルへと誘おうとした。
けれどもモニカはシュナイザーに体を向け、胸の前で指を組み合わせる。
その瞳は朝日に照らされる水面のごとく期待に輝いていた。
「シュナイザーは子供の頃から私が好きだったの? もしかして初恋?」
「うっ」
その通りだが照れくさいので頷けず、ベルナールを横目で睨む。
「お前のせいだぞ」
親友で同志に見せる不満顔は赤く染まっていた。
「俺のおかげでしょ。よかったね。初恋相手の心を掴んで。もうすぐ結婚もできるし羨ましいよ。悔しいから俺も可愛いメイドさんたちと戯れてこようかな」
「城内の規律を乱すな」
ベルナールはハハと笑い、居間へ繋がるドアから出て行った。