追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
続いて廊下に出ていく音と足早に立ち去る靴音も聞こえたので、急いでいるようだ。

メイドと戯れるというのは冗談で、宰相であり皇帝補佐もしているベルナールは常に忙しい。

「ったくあいつは、余計な真似を……」

息をついて視線を戻せば、モニカはまだキラキラした目でシュナイザーを見つめていた。

(余計でもないか。モニカが嬉しそうだからベルナールを怒るのはやめにしよう)

モニカを椅子に座らせ、ミルクティーを淹れてあげる。

向かい合って可愛らしいティーフーズを摘まみ、ふたりきりの平和な休憩時間を楽しむ。

「今日はなにをしていたんだ?」

「午前中はお勉強よ。最近はまじめに先生の話を聞いているから安心して。この国の法律とマナーを覚えないと、妃になってからあなたに恥をかかせてしまうもの」

「へぇ。座学はいつも上の空だったお前がな。俺のために苦手な勉強を頑張るというのか」

「そ、そうよ」

人差し指をこすり合わせて視線を逸らし、もじもじと恥じらうモニカ。

それをシュナイザーが頬杖をついて穏やかに眺めている。

(もっと恥じらう顔がみたいな)

「おい、こっち見ろ」

「うん?」

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