追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
頬を染めたモニカが視線を戻すのを待って、シュナイザーが真面目な顔をした。

「昔も今もお前が好きだ」

「わ、私も……」

それだけ答えてトマトのように顔を赤くしたモニカは、ついに両手で顔を覆ってしまった。

「ごめんなさい。嬉しさと恥ずかしさでどんな顔をしていいのかわからないの」

モニカを照れさせようと目論んでいたシュナイザーだったが、これには逆にときめきを与えられ、鼓動が際限なく高まった。

(可愛すぎるだろ)

年末の婚姻の儀が近づいてきたので、婚約発表を八日後に行うと決めた。

これまで年頃の貴族令嬢たちに興味を示さず、結婚願望のなさそうだった皇帝の突然の婚約発表に、国中がどよめき祝賀ムードに包まれることだろう。

ただしゴウランガ公爵だけは不愉快の極みだと思われるが。

(モニカと夫婦となり、このまま穏やかに暮らしたくなるな。残念ながら、それではいけないが……)

シュナイザーがカップを手に取り、適温まで下がった紅茶の水面に息を吹きかけた。

それがため息であることに、照れている最中のモニカは少しも気づいていない様子であった。



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