追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
妃になってからのモニカが貴族たちに舐められて苦労しないように、という思いからだ。

シュナイザーの前に腕を組んだ老夫妻が並び、一礼する。

「ハイロム伯爵、ようこそ。遠方からのご足労に感謝します。足の具合はいかかですか?」

「お気遣い嬉しゅうございます。足の方は痛みが引かず、どうにかこうにか歩いております」

ハイロム伯爵の夫人が挨拶中も夫の腕を離さないのは、足の悪い夫の体重を支えているからのようだ。

「椅子を用意しているが、高さやクッションが合わなければ言ってください。つらければ横になれる部屋も用意します」

「ありがとうございます。陛下はお優しい方ですな。ご迷惑になるより欠席した方がいいとも思ったのですが、今日はどうしても参加いたしたく馳せ参じました」

やや瞼の垂れたハイロム伯爵の目がこちらに向いたので、モニカは背筋を伸ばした。

「モニカ・メルネスと申します」

ボロを出さないようそれだけ答え、スカートを摘まんで腰を落とすと、ハイロム伯爵の目が弧を描いた。

「美しいご令嬢ですな」

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