追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「仲睦まじいご様子で結構ですな」

「ゴウランガ公爵、ようこそ」

嘘くさい笑みを浮かべるふたりの挨拶に、モニカの緊張が高まる。

(この方、公爵というから高い地位にあるのよね。威圧感に逃げ出したくなる。人の笑顔が怖いと感じたのも初めてよ。隣の娘さんも、仲良くできそうにない人……)

ふくよかな胸が強調されるデザインのワインレッドのドレスを身にまとったダリアは、敵意むきだしで睨んできて、モニカは首をすくめた。

それに気づいたシュナイザーが立ち位置をずらしてモニカを背中に隠してくれたので、ダリアの視線から逃げることができた。

「大陸一のピアニストを招いています。公爵のお好きな曲も演奏させましょう。今宵は心ゆくまでお楽しみください。では後ほど」

早々に挨拶を切り上げようとするシュナイザーに公爵は嫌な顔せず頷いた。

「余興としては十分。楽しませてもらいましょう」

公爵父娘が離れていくと、モニカはホッとして冷や汗をかいていたことに気づく。

一方、次の貴族と挨拶を交わしているシュナイザーに動揺は見られず、モニカは感心する。

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