追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
(シュナイザーはあのくらい平気なんだわ。皇帝になるまで修羅場を潜り抜けてきたからかしら。私もしっかりしないと。守られて当然の子供じゃないんだから)

招待客がほぼ来場し終えたホールは、色とりどりの女性たちのドレスで花畑のようだ。

右を向けばクロスをかけた長テーブル上に豪華な料理が並んでいて、立食スタイルで食事ができるようになっている。

左を向けば宮廷楽団が楽器を手に、ダンスが始まるのを待っていた。

シュナイザーはモニカを伴い、奥の上座に移動する。

玉座が置かれたそこは一段高くなっていて、モニカは壇の下で待つ。

シュナイザーが赤絨毯を踏んで登壇すると、話し声で賑やかだったホールが急に静かになった。

およそ三百人の貴族を前に、シュナイザーが声を発する。

「月の輝く良夜に舞踏会を開催できたことを喜ばしく思う。大勢が一堂に会するのは久しぶりだ。各々の領地より遠路はるばる足を運んでくれたことに感謝しよう」

皇帝らしい堂々として品のある話し方は、彼が苦労して身に着けたものであろうが、まるで生まれながらの貴族のように自然だ。

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