追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「モニカ……」

悲しそうな目を向けられ、モニカは慌てて弁解する。

「ドニに下心がないのはわかっているわ。でも駄目なのよ。婚約者が焼きもちをやいてしまうから」

「婚約者……誰の?」

「私のよ」

「ええええーっ!」

ドニが大声で叫んだため、バンジャマンが自分の耳に指を突っ込んで迷惑顔をしている。

「あら、そういえばまだ話していなかったわ。私、もうすぐ結婚するのよ」

婚約発表の舞踏会は半月ほど前のことで、今はもう誰に言っても構わない。

モニカの外出禁止もあの後すぐに解けた。

失脚したゴウランガ公爵はどうあがいても娘のダリアを皇帝妃にできない。

モニカを排除しても意味はないのだから、小者悪党に誘拐を依頼することはないだろうという判断だ。

ただし皇帝の婚約者なのだから護衛は必要である。

それまでのようにお忍びでの外出ではないので、モニカの護衛は多忙なハンス以外の兵士が職務として交代で当たっていた。

今日の護衛はモニカを鶴亀亭のドア前まで送り、『ついでに東地区の視察をしてくる。俺が戻るまで待ってろ』と言い置いて離れていった男だ。

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