追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「あんたをどこかで見たような……?」

知り合いだったかと記憶を探るも、すぐには思い出せないようだ。

バンジャマンがかつ丼を食べつつ、テーブルからのんきな声をかける。

「誰かと思ったら“腹ぺこ小僧”か」

「バンじい、久しぶり」

シュナイザーがその呼び名に文句を言わないのは、少年時代に空腹で倒れたところを助けられた恩を今も感じているせいだろう。

膝まで身を包む黒いマントは庶民風なので、皇帝としてここを訪れてもいないようだ。

「二年ぶりに顔を見せたか。わしのうどんに飽きたのかと思ったぞ。小僧が来られない代わりに寄越したお嬢さんが、よう食べてくれたがの」

(私、シュナイザーに言われたから鶴亀亭に通っていたわけじゃないわよ?)

シュナイザーに思惑があってバンジャマンと出会わされたことに、モニカはまだ気づいておらず首を傾げる。

モニカをちらりと見て苦笑したシュナイザーだが、そのことに触れなかった。

「うどんは食べたかったけど忙しくてな。悪く捉えないでくれ」

バンジャマンはホッホと笑って、どっこいしょと腰を上げた。

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