追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
このティアラが納品されたのは今日の夕方で、その時にも試着したモニカから感想を求められたというのに、ナターシャは微笑んで夕方と同じ返しをしてくれた。

「なっちゃんありがとう。結婚するっていう実感が強くなった気がしているの」

婚礼衣装も先日仕上がり、婚礼準備室に厳重に保管されている。

鍵を持っているのは花嫁担当責任者の女官で、モニカだって勝手に開けることはできない。

ベールと靴とペチコート、ネックレスとイヤリングとシルクの手袋も揃い、そこにこのティアラを加えたらブーケ以外の準備は整う。

ティアラを外したりかぶったりを繰り返して浮かれるモニカに、ナターシャがフフと笑って注意する。

「お気持ちはわかりますが、壊れると困るのでそろそろしまいましょう。私が婚礼準備室に――」

しまってくると言いかけて、ナターシャがハッと柱時計に振り向いた。

「今日の務め終わりに準備室に寄ろうと思っていたんですけど、うっかり二十二時を過ぎてしまいました。夜中は鍵を借りられませんので明日にするしかないですね。すみません」

「そうね。仕方ないから今夜はここで保管するわ」

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