追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
そういいつつもモニカが嬉しそうなので、ナターシャが不安げに眉を寄せた。

「ベッドに持ち込んでお休みになってはいけませんよ。確実に壊れます」

「そ、そんなことしないわよ。安心して」

(サイドテーブルに置いて眺めながら寝ようと思っていたんだけど、それでも心配されそうね)

心を見透かされて焦るモニカは、ティアラを箱に戻して立ち上がった。

「キャビネットの引き出しにしまうわ。それなら大丈夫でしょ?」

取り繕うように微笑んで、いそいそと寝室に移動する。

ネックレスやイヤリング、髪留めなどをしまっている引き出しを開けて、そこに箱ごとティアラをしまったら、モニカの目がそこにある物に留まった。

「あ……忘れてた」

紅白の組紐がついたガラス玉だ。

精霊の声を聞くために肌身離さず持っていたのに、最近はずっとしまいっぱなしである。

忘れていたというより、考えたくなかったのだ。

眉尻を下げたモニカは、ガラス玉を手のひらにのせて小さなため息をつく。

(わからなくなってきたわ)

今日、シュナイザーと晩餐をともにした時の会話を振り返る。

『ところで精霊の名を聞く努力はしているのか?』
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