追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
モニカが手の甲で涙を拭ったら、今度はナターシャが泣きそうな顔をした。

両手を強く握りしめ、なにかに耐えかねたように口を開く。

「申し訳ございません。私はモニカ様を裏切っていました。実は――」

皇帝命令で間者のようなことをさせられていたとナターシャが打ち明けた。

モニカがバーヘリダムに来て間もない頃に脱走をそそのかし、城門の通行許可証を貸したり東地区を勧めたりしたのは全てシュナイザーの指示だったそうだ。

それだけでなく、モニカの日々の言動を報告させられていたらしい。

「私の母は心臓病を患い国立病院に入院しています。陛下が名医を紹介してくださって、入院できるよう取り計らってくださったのです。高額な治療費もご負担いただいております。ですから私、陛下のご命令に背けず……。モニカ様には大変申し訳ないことをいたしました」

(なっちゃんの母親を人質にとって言うことを聞かせようとするなんて……)

陰でそんなことをしていたのかと、モニカはショックを受けて言葉を失った。

ナターシャがモニカとシュナイザーの板挟みで苦しんでいたことに、怒りが沸々と湧き上がる。

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