追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「なっちゃん、私、文句を言ってくるわ」

「モニカ様、お待ちください……あっ!」

ナターシャの静止を振り切ってモニカは部屋を飛び出した。

廊下のランプは火が弱められ、薄暗く静かだ。

いくら婚約者でも、夜中に寝間着にガウン姿で訪ねるのははしたないが、そんなことを意識していられないほどモニカは腹を立てていた。

(こそこそ私を監視するなんて卑怯よ。なっちゃんにそんなことさせないでって言ってやるんだから)

シュナイザーはいつも日付が変わるまで仕事をしていると言っていたので、この時間は執務室にいるはずだ。

廊下を駆けて階段を一階分上がり執務室に近づくと、予想通りドアの隙間に明かりが漏れていた。

唇を真一文字に引き結んだモニカがノックしようとすると、中から話し声がするのに気づいた。

誰かと政務の相談中なら出直すべきかと迷ったが、ボソボソと聞こえる会話に自分の名が交ざっていたため聞き耳を立ててしまう。

「モニカが可愛いのはわかるけど、生温いよ。精霊の名を早く聞き出すよう強く促して。ロストブの民が苦しんでいることを忘れたの?」

責めるような声はベルナールのものだ。

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