追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「忘れてはいないが……」

シュナイザーの返事に続いて聞こえたのは、苦々しいハンスの声。

「修練所では今も精霊憑きの子供たちが酷い目に遭わされている。虐待、洗脳、粗末な食事に強制労働。反抗すれば折檻され、挙句の果てに金持ちに売られる。俺たちもそれを味わってきただろ」

モニカは胸が締めつけられるように痛んだ。

(シュナイザーから聞かされて初めて教会が腐敗していると知ったわ。自分がロストブを離れたから過去のように思ってしまったけど、今も苦しんでいる子供たちがいるのよね)

モニカは自分だけ幸せになることに罪悪感を覚えた。

会話の声はベルナールに戻る。

「国王は見て見ぬふり。いや、人身売買で得た金の一部は国庫に入るから同罪だ。国民の困窮を顧みない税の徴収に形ばかりの裁判制度と発展しない産業。聖地があるというだけで強気に出る愚かな外交政策。あの国に革命が必要だと言ったのはお前だろ。ロストブを出たお前と再会した時に、『独裁政治と腐敗した教会をぶっ壊して革命を起こす』と宣言されて俺は感心したんだ」

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