追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「俺と口をききたくないならそれでもいいが、話は聞け」

てっきり謝罪や言い訳をされるのかと思ったが、シュナイザーの声は厳しい。

「今さら隠しても意味はないから教えるが、精霊憑きが覚醒するには条件がある。己に憑いている精霊の名を聞くことだ。だからお前に精霊と対話するように言ってきた」

(やっぱり)

モニカは晩餐室に入って初めてシュナイザーと視線を交えた。

翡翠色の瞳は険しく眉間に力が入り、唇は引き結んで左手の甲に右手の爪を立てるようにして握っている。

つらい気持ちを表に出すまいとしているようなその表情に、モニカはハッとした。

(子供の頃に、こういう顔をするシュナイザーを見たような気がするわ)

修練所にいた時の彼は、年下の子供たちの面倒をよく見ていた。

ある時、食事を終えた皿を落としてしまった子がいたのだが、シュナイザーは自分の皿をその子に渡し、割れた皿を持って自分の不注意だと聖職者に報告した。

厳しく叱責され懲罰棒を振り上げられた彼は、今と同じ顔をしていたように思う。

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