追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
(シュナイザーに守られた子供がたくさんいたわ。私もそのひとり。彼だって子供だったから、きっと怖かったわよね)

かつての優しい彼を思い出したことで、モニカの怒りの目盛りは幾らか下がったが、すぐに元に戻される。

「精霊から早く名を聞き出せ。覚醒する努力が足りない」

少しも悪びれずに命令してきたからだ。

モニカは胸の奥に痛みを覚え、厳しい面持ちの彼をキッと睨みつける。

「早く取引材料になれってことね?」

「そうだ。精霊は認めた者にしか名を教えない。教会からの洗脳が解けたお前はもう自分の頭で考えられるようになった。城下で人助けをする心の動きは精霊に届いているはずなのに、なぜ覚醒しない」

「そんなの知らないわ。精霊の声は途切れ途切れにしか聞こえないもの」

「精霊の名を知りたくないと思っているからじゃないのか? このまま俺の妻となって悠々と暮らし、大災厄でロストブの民が何百万人死のうが構わないと思っているんだろう」

モニカはギクリとして目を逸らした。

(ロストブのみんなが死んでいいとは思ってないわ。でも、シュナイザーと一緒に未来を生きたいとは思ってた……)

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