追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
モニカはうつむいてボソボソと言い訳する。

「死ぬのが怖いって思わせたのはあなたじゃない。洗脳状態でいられたら、名誉な死だと喜べたのに」

「それじゃ覚醒できない。お前の両親はロストブのどこかで暮らしている。友人や世話になった人もいるよな。ひとりひとりの顔を思い浮かべて、自分の命を犠牲にしても助けたいという気持ちを膨らませろ。恐れに打ち勝て。ロストブを救えるのはお前だけなんだから――」

グラスから水が飛び出してシュナイザーの顔を打ち、言葉を遮った。

「もうやめて!」

偉そうな説教に悔しさを爆発させたモニカは、テーブルを叩いて立ち上がる。

「あなたの言う通り、ロストブの何百万の民の命を救えるなら私ひとりの命なんかいらない。そう思うことにするわ。できるわよ。子供の頃からそう思って生きてきたんですもの、そこに気持ちを戻せばいいだけよ。ただ……」

モニカの大きな瞳から涙がひと粒こぼれ落ちた。

「ただ、あなたにだけは、なくしていい命だと思われたくなかったわ」

それまで厳しい姿勢を崩さなかったシュナイザーが、つらそうに目を伏せた。

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