追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
こちらの方が立場が上だと示すために、あえて不遜な物言いをしている。

皇帝を二年やっていれば威圧感を与える態度も板につき、初老の導師が微かに顎を引いた。

モニカが覚醒したのは一週間前のことである。

待っていても噂はロストブまで届くだろうが、大災厄は来年早々起きるかもしれないため時間に猶予はなく、シュナイザーは書簡を届けた。

そこにはモニカと愛ある日々を送っていることと、間もなく正式に結婚するという報告が九割で、麗しい伴侶を手に入れたことへの喜びとお礼をたっぷりとしたためた。

そして文末の二行に、聖女の力に覚醒した旨をさらりと書き、『いかがされるか?』と判断を迫ったのだ。

必死に聖女を探していたロストブ側は、モニカを手放したことを激しく後悔したに違いない。

その翌日の夜遅くにロストブの使者がやってきた。

『失礼を承知でお願い仕る。聖女モニカを我が国に返還願いたい』

ルビウス三世の返事は予想通りで、シュナイザーは新たな書簡を使者に託した。

大国バーヘリダムの皇帝妃を奪うつもりかという非難から始まり、どうしてもと言うならと条件をつけた。

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