追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
ベルナールが重厚な箱から取り出してテーブルに置いたのは、オルグランドとレイマーク王のサイン入りの書簡である。

「皇帝陛下はすでに相談済みでございます。そのお返事がこの中に。二国とも賛同しておられます」

賛同ではなく、争いに巻き込まないでくれとばかりに『静観する』と書かれていたのだが、ベルナールは自信ありげに微笑んで見せた。

ルビウス三世は中を確かめようとはせずに信じ、目をむいている。

「そんな、馬鹿な……」

シュナイザーが冷たい視線をルビウス三世に戻し、厳しく非難した。

「権力を手放すまいとして軽々しく戦争などと口にする。貴殿には国民を思う心はないのか」

頭を抱えたルビウス三世に代わり、それまでオロオロするばかりだった導師が口を開いた。

「国王陛下のご判断に口出しする権利は私にはございませんが、教会に関しましては私を含めた現幹部の一斉退陣に同意する所存にございます」

「導師!」

驚くルビウス三世に、導師が諦めの目を向けた。

< 238 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop