追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「バーヘリダム皇帝陛下の仰る通り、私どもは愚かでした。民を導く資格はございません。大災厄を鎮めるために聖女をお返しくださるのなら他にはなにも望みません」

私利私欲で教会を運営していた導師でも、聖職者として民衆の幸せを願う心は残されていたようだ。

最後の味方を失い焦りを顔に浮かべたルビウス三世に、シュナイザーはソファにふんぞり返って見せた。

「国と一緒に滅びたくはないだろう。貴殿に選択肢はない」

静かな応接室に、観念したような呻きが響いていた。


正式な国家条約締結の書類にお互いサインをし、ロストブとの交渉は終わった。

モニカと引き換えにこちらの要求をすべて通した形である。

すぐさま帰国の途に就くルビウス三世一行を城門まで見送ったシュナイザーは、邸宅内に引き返して執務室を目指す。

一階の中庭が見える廊下を足早に進んでいると、モニカの姿を見つけた。

毛糸の帽子にマフラーと手袋をして、ナターシャや若いメイドたちと雪遊びをしている。

(スノーマン作りか? 胴がひとつ足りないだろ。いくら雪が珍しいとはいえあんなにはしゃいで、子供みたいだな)

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