追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
嘘をつくのは苦手だが話を合わせなければと、モニカは作り笑顔でぎこちなく頷いた。

「う、うん。冗談言ってごめんなさい」

「構いません」

そんなことより、と言いたげなナターシャに着替えを急かされる。

「早くお支度を。食事がすんだら陛下がお会いになられるそうです。お急ぎください」

「わかったわ」

モニカの頭にニヤリと不敵に笑うシュナイザーの顔が浮かんだ。

(本気で私と結婚する気なのかしら。ひと晩経ってその気がなくなった……とならないかな)

噂とはなにか違う印象の皇帝だが、それでもモニカは結婚に前向きになれない。

皇帝の彼が、なにを好き好んで聖女のなりそこないを欲しがるのか理解しかねる。

水の精霊憑きなのが珍しいからで、飽きたらポイと捨てられそうな予感もした。

(私は結婚しませんと話さなくちゃ)


長い乾季と短い雨季しかないロストブと違い、バーヘリダムには四季がある。

八月後半の今は夏空が広がり、モニカは半袖のレモン色のデイドレスに身を包んだ。

食堂での昼食の後に謁見室に案内される。

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