追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
(ここのところずっとモニカは無理して笑っている。聖女の使命を受けいれて、大役を果たす日が来るまではなるべく楽しい気持ちでいるようにしているのだろう。それはきっと俺のためだ。胸の内では嘆いているであろうに、俺は慰めてもやれない。悪魔か……)

愛しい人に心から笑ってもらいたいという想いと、己の使命にシュナイザーの葛藤は続いている。

ハンスには迷いはないと言い切ったが、なんとかならないかとまた思うのだ。


時刻は二十二時。

庶民風のマントに身を包んだシュナイザーはひとりで城を出て東地区を進む。

夜道に人の姿はなく、ただしんしんと雪が降っている。

「寒いな。お前は薄着だが平気なのか?」

話しかけている相手は自身に憑いている精霊だ。

『今さらそんなこと聞くなんて。おいらたちは実体がないから寒くない』

ウインドルはシュナイザーの頭の上であぐらを組んでいて、『バーカバーカ』とからかって笑っている。

モニカの精霊は固い話し方をするそうなので人間のように性格は様々なようだ。

馬鹿にされてもシュナイザーは怒らない。

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