追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
本気で寒くないのかと聞いたわけではなく、返事をさせるのが目的だったからだ。

「今はしっかり起きているな。この前も聞いたことに答えてくれないか? 三百年前に……」

ところがシュナイザーの問いかけの最中にウインドルのわざとらしい寝言が聞こえてくる。

『うーん、むにゃむにゃ。うどんよりラーメンが食いたい』

「ラーメン? モニカの新メニューをなぜお前が知っているんだ。大体、精霊はなにも食わないだろ。いや、それより質問に答えてくれ」

『ぐーすかぴー』

(ウインドルから聞くのが手っ取り早いんだが駄目か)

諦めたシュナイザーはそれから無言で歩調を速め、数分して鶴亀亭の前に着いた。

とっくに閉店時間を迎えているが、店舗の窓に弱いランプの明かりが見える。

シュナイザーがノックすると、数秒置いてドアが軋んで開けられた。

手にしているランプを掲げて訪問者の顔を確かめたバンジャマンはホッホと笑った。

「そろそろ来ると思っとった」

「なぜ?」

「お主はかつてのわしに似とるからの。そこは寒い。お入り」

招き入れられると店内はほんのり暖かい。

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