追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
よれよれの毛糸のカーディガンを羽織ったバンジャマンがダルマストーブの火を強めに行き、シュナイザーはランプが置かれた四人掛けテーブルの椅子に腰かけた。

薪に手を伸ばす老爺の背を頬杖をついて見つめ、弱音を吐いた。

「覚悟が足りなかった。モニカの笑顔が胸に突き刺さる。教えてくれ。聖女を死なせずにすむ方法はないのか?」

「ないの」

即答されてうつむいたシュナイザーだが、バンジャマンが付け足す。

「“これまでは”じゃ。来年の大災厄ではどうなるか誰も知らん。あらかじめわかっている奇跡などない」

シュナイザーがハッと顔を上げた。

バンジャマンは薪をくべてダルマストーブのドアを閉めると腰を叩いて立ち上がり、シュナイザーの斜め向かいの椅子に「どっこらせ」と腰を下ろした。

「手がかりが欲しい。三百年前の聖女のことを聞かせてくれ」

シュナイザーの必死さは伝わっているだろうに、バンジャマンは顎髭をしごくばかりでなにも言わない。

ただ年老いた目をつらそうに、入り口横の壁に飾られた招き猫に向けている。

「バンじい、頼む。モニカを助けたいんだ」

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