追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
シュナイザーがテーブルに額がつくほど頭を下げると、長いため息がきこえ、老爺はぽつぽつと語りだした。

「わしと聖女ローラは姉弟じゃった」

精霊憑きの扱われ方は時代により大きく異なる。

三百年前はセントアグニス教は衰退していた時期で、精霊憑きは呪われた災いをもたらす存在だと忌み嫌われていた。

バンジャマンの前世の名はクリスで、風の精霊憑きだ。

二歳上の姉ローラは水の精霊憑きでひとつの家からふたりも精霊憑きが生まれるのは珍しく、両親の悩みの種であった。

『うちが村で一番貧しいのはお前らのせいだ。クソガキどもめ。なんで生まれてきちまったんだ』

酔った父親に罵られるのは日常茶飯事で、母はいつも疲れた顔をしてかばってくれたためしはない。

泣き出したクリスの小さな手を引いて、ローラは納屋へ逃げ込んだ。

『クリス泣かなくていいのよ。今日はいい日だわ。ぶたれなかったんですもの』

つらい境遇は同じなのにローラはいつも明るく前向きで、クリスは不思議だった。

『ローラは悲しくないの? 精霊が離れたらいいのにって思わないの?』

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