追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
ロストブは今よりも貧しく内紛が頻繁に起こっていた。

おそらくは国民の不満を逸らす目的があったのだと思われる。

姉弟の家にも兵がやってきたが、両親は隠すどころか厄介払いができると喜んで差し出そうとした。

狩られた精霊憑きは奴隷かそれとも殺されるのか。

恐怖を感じた姉弟は手を取り合って裏口から逃げだした。

しかし村を出たところで兵に追いつかれ、クリスは立ち止まった。

『俺がおとりになるからローラは逃げろ』

クリスには兵に立ち向かえるほどの魔力はない。

それでも姉を守りたいという一心で仁王立ちになったら、容赦なく兵士五人の刃が襲い掛かった。

すると辺りが眩い光に包まれた。

振り向けばローラがロッドを手にしており、滝のような雨を降らせて兵士たちを退散させた。

驚くクリスをローラが抱きしめた。

『あなたを守りたいと願ったら水の精霊が力をくれたのよ。クリスが私を目覚めさせてくれたんだわ。ありがとう』

これまでローラは精霊憑きでよかったと言ってきたが、それはクリスを慰めるためであり、こんな力さえなければ厄介者扱いされなかったのにと内心では嘆いていた。

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