追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
けれども弟を守るために初めて力が欲しいと望み、精霊は応えてくれた。

クリスの存在がローラの心を変えたから覚醒できたのだ。

「その時のわしはローラの覚醒を喜んだ。守ってほしかったわけじゃないぞ。また兵がやってきてもローラは自分の身を守れる。生き延びることができると思ったからじゃ。全くもって愚かじゃ」

つらそうな息をついてバンジャマンが立ち上がった。

ダルマストーブの上では古ぼけた銅製のケトルがシュンシュンと湯気を吹いている。

その湯で緑色の茶を淹れて戻ってくると、「日本の茶だ」とシュナイザーの前にカップを置いた。

「ありがとう」

お礼の言葉は珍しい茶に対してだけではなく、つらい思い出を語ってくれることに対してもだ。

片手で顔をしごくように撫でたバンジャマンが、続きを話し出す。

「それからわしらは町に出た。精霊憑きを隠してひっそりと暮らしたんじゃ。わしは大衆食堂で見習い料理人、ローラは宿屋で下働きをして生計を立てた。あの頃は幸せじゃったの」

しかし貧しくも穏やかな暮らしは一年ともたなかった。

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