追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
砂漠の砂が町の中心部まで入り込むほど風の強いある朝、姉弟が暮らしていた長屋のドアがノックされた。

開けるとそこには兵がいて見つかってしまったと焦って身構えたが、やけに恭しい態度を取られた。

『国王陛下が城にてお待ちでございます。聖女ローラ様と御弟君を丁重にお迎えするようにとの命を受けて参りました』

いぶかしみつつも姉弟は兵に連れられ馬車で王城に入った。

見たこともないご馳走をふるまわれた後に、国王がようやく用件を口にした。

『砂漠に大竜巻が現れた』

セントアグニス教が衰退していた時代なので、姉弟は大災厄の伝承をこれまで聞いたことがなかった。

国王は知っていても今まで信じていなかったそうだが、『伝説ではなかった』と顔色を青くしていた。

三百年ごとに繰り返される大災厄と聖女の役割を姉弟に教えた国王は、玉座を下りて頭を下げた。

『聖女ローラよ。どうか我らをお救いください』

『迫害しておきながら助けろって言うのか!』

思わず怒りをぶつけたクリスを、ローラは諫めて国王に答えた。

『わかりました。私に鎮められるならやりましょう。聖地まで連れて行ってください』

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