追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
(シュナイザーの愛の重さをはかろうとしてはだめ。今日は嫌なことを考えないって決めたのよ。私の人生で一番幸せな日なんだから。ただ喜びたいの)

シュナイザーの後にベルナールとハンスも出て行って、ナターシャとふたりになる。

先ほどのキスでモニカの口紅が薄くなってしまったので、ナターシャが鏡の前に座らせた。

化粧直しをするナターシャは浮かない顔をしている。

なにも言わないが、この結婚を不安に思っているのだろう。

(なっちゃんの心配を解いてあげないと……)

モニカは鏡越しに真剣な目をナターシャに向けた。

「私は全て承知しているの。ロストブに帰ることも受け入れているわ。だから大丈夫よ」

ルビウス三世が去った後もシュナイザーとロストブ側の交渉は続き、詳細まで決められた。

モニカの返還は雪解けの三月一日に。

どんなに急いでも国内改革には丸三か月はかかるとロストブ側が言ったからだ。

しかし、それまでに大災厄の兆候が見られたら、即刻モニカを帰還させるとの約束である。

バーヘリダム内では公にしない密約だが、モニカは急な別れとならないようにナターシャにだけは打ち明けていた。

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