追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「はい。ぐっすり眠ったので元気です」

「初めての場所で深い睡眠がとれる図太い神経でよかったな」

(怒っていいかしら?)

頬を膨らませてもククと笑うだけの失礼な男だが、この雰囲気ならとモニカは切り出した。

「お願いがあります。結婚の話はなかったことにしてください。昨日知り合ったばかりなのにおかしいと思うんです」

途端にシュナイザーの眉間に皺が寄った。

「この俺の妻になるのが嫌だと?」

冷静な声なのがかえって恐ろしく、モニカは焦って早口になる。

「そうじゃないです。陛下が私を欲しがる理由がわからないから困っているんです。だって私は聖女のなりそこないですよ? 無価値な私と結婚したらきっとあなたが後悔します」

自分を卑下する性格ではないが、皇帝のプライドを傷つけるのは怖いのでそう言った。

けれどもシュナイザーは頷かず、フンと鼻を鳴らした。

「価値があるかないかは俺が決める。結婚もだ。婚約の儀は面倒だから省く。婚姻の儀は年末に執り行う。まだ四か月あるからその間に覚悟を決めろ」

(覚悟なんか決まらないわよ)

それならばとモニカは違うお願いをしようとする。

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