追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
この後は馬車に乗ってパレードの予定である。
城下の民が妃の姿を見ようと沿道で待っていることだろう。
モニカが片足を外気に触れさせたその時――。
長いアプローチの先の正門でなにやらもめる声が聞こえた。
誰かが兵士に両腕を捕らえられてもがきながら「お通しくださいませ」と叫んでいた。
遠目なので顔はわからないが身なりはよく、婚礼を邪魔しに現れた不届き者には見えない。
モニカが問いかけるように隣を見ると、シュナイザーが目を見開いていた。
「まさか……」
その声にかぶせるように、捕縛された男が悲鳴のように叫ぶ。
「聖女モニカ様、大災厄です。大竜巻が砂漠に出現しました。どうか、どうか、ご帰還ください。我らをお救いください。聖女様!」
(まだ今年は終わっていないわよ……)
来年のいつ頃、起きるのかと考えていたのに、此度の大災厄はせっかちで一日早く訪れた。
幸せの絶頂から奈落の底へ。
しかしモニカは震えそうな心を叱咤して、シュナイザーから腕を離した。
(私は聖女。水の精霊憑きで生まれたのは人々を救うため。私はこの使命を果たすわ)