追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「行くわ。シュナイザー今までありがとう。さようなら」

泣くまいと堪えているため、不自然な笑みになる。

(シュナイザーの目に映る最後の私は、笑顔がよかったのに……)

未練を断ち切るかのように前を向いたモニカが足を前に進めたら、手を握られて止められた。

「シュナイザー?」

振り返れば、決意のにじむ強い眼差しを向けられた。

「別れの言葉は不要だ。俺も共に戦う」

その意味を理解するのに数秒かかった。

大災厄を鎮めるのは聖女の役目で、ひとりで立ち向かわねばならないと思い込んでいたためだ。

(風の魔力で加勢してくれるの? 心強いけどバーヘリダムはどうするの? 皇帝の身にもしものことがあってはいけないでしょう)

「で、でも……」

背後では貴族たちがざわついている。

門前での騒ぎと皇帝夫妻の様子に異変を察しているようだが、なにが起きたのかまではわかっていない様子だ。

戸惑うモニカの手を引き、シュナイザーが走り出した。

ふたりが雪を蹴って正門に向かったら、その前に立ちはだかる者が現れた。

ベルナールだ。

< 263 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop