追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
言いにくいのでモジモジしながら、「あの」と切り出した。

「結婚しても私に手を出さないでもらえますか? 愛もないのにそういうことをするのは、ちょっと……」

「抱かれたくないと言うのか」

(はっきり言わないで)

モニカは真っ赤な顔をうつむけた。

ロストブの貴族邸ではメイドたちが恋愛話を楽しんでいたけれど、照れ屋のモニカはその輪に入っていけなかった。

今も顔から火を噴きそうに恥ずかしい。

シュナイザーが椅子を立った音がして、モニカの視界に黒革のブーツが入る。

彼の機嫌を確かめたいが、羞恥の中にいるモニカは顔を上げられない。

すると顎を掴まれ上を向かされた。

声も出せないほど驚き鼓動を高まらせるモニカを、拳三つ分の距離で彼がククと笑う。

「お前の要望はわかった。俺も嫌がる女を抱く趣味はない。抱いてくださいと言わせてからにしよう」

(言わないわよ!)

シュナイザーの言動に振り回されるモニカは、次はなにをされるかと身構えた。

けれども彼は柱時計に目を遣ると、あっさりと離れて玉座に戻った。

この後も謁見者が詰まっているからなのか、話を締めくくろうとする。

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