追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
その頃のナターシャはゴウランガ公爵の息女ダリアに侍女として仕えていたのだが、ダリアのわがままで意地悪な性分にはほとほと嫌気がさしていた。

けれども勤めを辞めるわけにはいかない。

貴族といっても領地を持たない男爵家の娘なので生活するのに実家からの援助はなく、それどころか母親が心臓病で入退院を繰り返していたため治療費を稼ぐ必要があった。

その日、ナターシャはダリアの買い物に付き合わされひどい目に遭った。

鳥の糞でドレスが汚れてしまったダリアはひどく憤慨し、八つ当たりでナターシャに意地悪な指示をしてきた。

自分は先に馬車で戻っているから、ナターシャは購入品を抱えて歩いて帰ってこいというのだ。

メインストリート沿いの店々でダリアが買ったのは、ドレスに帽子に靴にバッグ、化粧品にアクセサリー、お菓子と全二十品。

後で屋敷の使用人男性がまとめて受け取りにいく話はどこへいったのか。

ひとりで持ちきれない量だとわかっていながらの嫌がらせ命令に、置いて行かれたナターシャは困った。

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