追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
しかしやらないわけにいかず両腕いっぱいに荷物を抱えてよろよろ歩いていると、高級な馬車が横づけされて窓が開き車内から声をかけられた。

『君はたしかゴウランガ公爵家の使用人だな。その荷物はどうしたんだ?』

それがシュナイザーだった。

彼はナターシャが遠慮しても荷物とともに馬車に乗せてくれた。

その上、身の上話まで聞いてくれて、母の心臓病のことを打ち明けたら名医がいる国立病院に無償で入院できるよう取り計らってくれた。

即位の際には黒い噂が流れていた彼だが、本当は親切で善良なのだとナターシャは感激したのだ。

けれども優しいだけの人ではなかった。

そのひと月後にナターシャはシュナイザーに命じられ、公爵家での勤めを辞めて城で働くことになった。

さらに翌月には、ロストブから婚約者を迎えるからその令嬢の侍女になれとも言われた。

モニカに関してシュナイザーがなにかを企んでいる様子を感じても、恩を着せられたナターシャは従うしかない。

(侍女勤めを辞められない。母の病状が快方に向かって感謝しているけど、人質に取られたようなものだわ)

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