追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
下がっていいと言われ、ナターシャは深く一礼してから退出した。

廊下を進みつつ、『なっちゃん』と親しげに呼んでくれたモニカの顔を思い浮かべる。

(私と同じ年だけど少し子供っぽい。天真爛漫で純粋で無邪気でもあるわね。無垢な少女を罠にはめる手伝いをしているようで胸が痛い……)

エプロンドレスの胸元を握りしめたナターシャは、罪悪感にため息をついたのであった。



日暮れ前に帰城したモニカは自室のソファに座っている。

ナターシャがカモミールティーを淹れてくれて、モニカと向かい合って腰を下ろした。

「今日はとても楽しかったわ。なっちゃんのお陰ね。協力してくれてありがとう」

まだ東地区だけではあるが、自由に外出できた興奮が冷めない。

戻ってからずっと笑みを浮かべているモニカにナターシャが首を傾げる。

「そんなに楽しかったんですか?」

「そうよ。不思議なお店に行ったの。そこでお土産も買ってきたのよ。はい、どうぞ」

モニカが紙包みを開くと、白くてフワフワした丸いお菓子が現れた。

「初めて見ます」

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