追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
けれどもメイドに不思議そうな目で見られ、断られた。
『私は昼食を一時間前に済ませましたので』
『デザートもついていたの?』
『はい。もちろんです』
首を傾げられたモニカは、この国で果物や菓子は特別なものではないと悟ったのだ。
モニカとナターシャでは食に対しての価値観がずれていそうだが、同じ甘党だとモニカは素直に喜び自分も饅頭を手に取った。
ひと口食べてなぜか懐かしくなる甘みに頬を綻ばせる。
鶴亀亭で感じた疑問はなにひとつ解消されていないけれど、すっかり考えることを諦めて今はナターシャとのティータイムを楽しんだ。
「そうだ、なっちゃんの許可証を返すわ。次に出かける時、また貸してね」
「次、ですか……」
ナターシャの顔が曇ったのでモニカは慌てた。
(今回だけのつもりで貸してくれたのかしら。本当は迷惑に思っていたのかも)
「ごめんなさい」
眉尻を下げたモニカだがあまりに楽しかったのでもう出かけないとは言えず、「次は自分で抜け出すわ」と困り顔で微笑んだ。
ナターシャはハッとしたように首を横に振る。