追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「いえ、どうぞ私の許可証をお使いください。黙って突然出ていかれましたら困りますので」

「心配してくれるの?」

「え、ええ」

心配以外にも理由がありそうな返事だが、モニカはなにも勘づかずパッと笑顔になる。

立ち上がってテーブルを回り、ナターシャの隣に座って抱きついた。

「なっちゃんありがとう!」

するとナターシャの息を呑む音が聞こえ、一拍置いて囁くような小声の忠告を与えられる。

「モニカ様、皇帝陛下にお気をつけくださいませ」

やけに真剣みを帯びた声にモニカは抱擁を解いてナターシャの顔を見た。

「どういうこと?」

首を傾げて意味を尋ねてもナターシャは答えてくれず、立ち上がって茶器を片付け始める。

「晩餐に差し障りますのでティータイムはここまでにいたしましょう」

「待って、さっきの注意は――」

「私からはそれしか申し上げられないんです。申し訳ございません。後はご自分でお考えくださいませ」

ナターシャの背中がそれ以上の質問を拒んでいた。

(陛下のなにに気をつければいいのかしら)

今日は随分と考えさせられる日だ。

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