追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
人差し指を顎に添えて目を閉じ答えを導きだそうとしたモニカだが、ここでもすぐに放棄する。

修練所では盲目的に聖職者の教えに従うだけで、疑問や理由を尋ねると叱られた。

心の奥まで染み込んでいる諦め癖を今さら直すのは難しかった。


晩餐と沐浴を楽しんだ後、モニカは自室で過ごしている。

ナターシャはモニカが寝間着に着替えるのを手伝ってから侍女部屋に戻っていった。

居間の机には分厚い本が二冊ある。

法律と作法の本は『明日から勉強を始めるので予習しておいてください』とモニカの教師役の女官が置いていったものだ。

他にやることがないので作法の本を開いて読み始めたモニカだが、わずか二ページで瞼が下がってきた。

(子守歌より寝つきがよさそうな本ね)

諦めて本を閉じたモニカが寝室にいこうと机から離れたら、ドアがノックされた。

柱時計を見れば時刻は二十三時である。

(なっちゃんは明日の朝まで来ないはずよ。用があれば夜勤のメイドを呼ぶよう言われたもの。誰かしら?)

深く考えずにモニカは「はい」とドアを開け、目を丸くした。

廊下にシュナイザーがひとりで立っていたからだ。

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