追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「俺の執務室から中庭越しにこの部屋の窓が見える。明かりが灯っていたから起きているなら散歩に連れて行ってやろうと思ったんだ」

「こんな夜中にですか?」

「ああ。夜空の散歩だ。行きたくないならやめるが」

モニカは「行きます」と即答した。

シュナイザーへの警戒心より好奇心が上回り、鳥でもないのに夜空をどうやって散歩するのかと胸が高鳴った。

「着替えてきますので少しお待ちください」

いそいそと寝室に向かえば、後ろに笑い声がする。

「夜這いを警戒したくせに、俺を部屋から追い出さずに着替えるのか」

寝室へ続く扉に鍵はなく、指摘されて足を止めたモニカは顔を赤らめて振り向き、もじもじする。

「上にガウンを羽織ってこのままいきます」

「覗かないから着替えろ。腹を冷やすぞ」

(だったらなにも言わないでほしかったわ)

まだ出会って二日目だが、シュナイザーについてひとつだけわかったことがあった。

(私をからかうのが楽しいみたい)

頬を膨らませたモニカは、ククと笑う声を後ろに聞きつつ寝室へのドアを開けたのだった。

それから十五分ほどして、モニカは歓声を上げている。

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