追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「すごいわ。街が一望できる!」

モニカが跨っているのは翼竜だ。

ロストブにも騎士団所有の翼竜が五頭だけいるが、国境警備用で一般人は乗れない。

移動手段は街の中は馬で砂漠地帯はラクダであった。

モニカが落ちないようシュナイザーが後ろから腰に手を回して抱えてくれている。

体が密着して恥ずかしいが、夜空の散歩に興奮中のため嫌だとは思わなかった。

家々の窓辺に灯る明かりは星屑のように美しく、上を見上げれば本物の星空が広がっている。

「なんて綺麗なの」

モニカがうっとりとため息を漏らせば、フッと笑うシュナイザーの息が髪にかかった。

腹部に回された逞しい片腕や彼の体温が伝わる背中を急に意識し、モニカの頬が赤く染まる。

「陛下、連れてきてくださってありが――きゃっ!」

急に右旋回されて驚くと、耳元に頼もしい声がする。

「絶対に落とさないから安心しろ」

(落ちるとは少しも思っていないわ。なぜかしら。陛下には注意した方がいいはずなのに)

安心して命を預けている今の状態は疑問だが、ここでも考えるのを放棄して心は再び幻想的なまでに美しい景色に戻された。

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