追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
翼竜はスピードを上げて北東へと飛ぶ。

不思議と体に当たる風は柔らかくデイドレス一枚でも寒くない。

シュナイザーが前方を指さした。

「港はあそこだ」

遠くに少し大きな点として見えていた明かりが瞬く間に眼下に広がった。

レンガや石で整備された岸壁に商船と漁船が何十隻も停泊しており、煌々と灯るガス灯に照らされていた。

大きな倉庫が建ち並んで人の出入りも見られた。

港の端に灯台もあって夜の海に光の帯を伸ばしている。

ゆっくりと旋回する翼竜の背で、モニカは感嘆した。

「これが海。こんなに大きいのね」

陸地より海の方が広いのは知っているが、見渡す限りに広がる水に圧倒されていた。

(コップの水くらいなら動かせるけど海水は無理だわ。私の力はちっぽけだから)

「あ、大きな船がこっちに来ます」

「東洋からの貿易船だ。絹やスパイス、穀物などを運んでくる。この港は年中眠らない」

入港する貿易船を迎えるため、屈強そうな男たちがレンガ壁の建物から続々と出てきた。

男たちの張り切った掛け声が潮風に乗って耳に届き、モニカまでワクワクした。

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