追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~
「東地区で井戸掘りに困っている住民がいたはずだぞ」

「井戸掘り……あっ」

腕組みをした彼が不機嫌そうにモニカを見据えている。

気を抜いていたところで急に追及が始まって、モニカは焦りだした。

「勝手に抜け出して申し訳ありません。二度としませんのでお許しください」

噂では冷酷非道の皇帝の命に背けば容赦なく投獄されるという。

実際に彼と話して噂とはなにか違うと感じていても、怖いという思いを消せるほどではない。

胸の前で手を組み許しを請うモニカに、シュナイザーはため息をついた。

「怒っていないから怯えるな。俺は魔力を使わなかった理由が知りたいだけだ。困っている民を助けなかったのはなぜだ?」

(お咎めなしなの? それならなぜ禁止と言ったのかしら)

不思議に思いつつも、モニカは昼間のことを振り返る。

鶴亀亭を出たモニカがひとりでブラブラと東地区を見て歩いたら、町外れまで来てしまった。

そこはまだ開発の手が届いていないらしく、修繕も追いつかないような粗末な家が点在し林が続いていた。

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